第六講 予想貸借対照表|貸借対照表の概要
期首・期中・期末
損益計算書は1年間の売上や利益を示すものでした。
しかし、貸借対照表は1年間の終了時点の資産や負債の残高を記載したものです。期間があるものではなく、スナップショットになっています。
会計期間の開始時点のことを期首、終了時点のことを期末、期首から期末までの期間のことを期中といいます。
貸借対照表には、期末時点の数値が記載されているということです。
予想の基本は期中の増減
貸借対照表の項目の予想は、原則としては以下の計算式で考えます。
- 期首数値 + 期中の増加 - 期中の減少 = 期末数値
例えば、売掛金であれば、次のように考えることができます。
- 期首売掛金 + 新たな売上 - 売掛金の回収 = 期末売掛金
すべての項目について、このように増加と減少を考えていけば、貸借対照表の数値(=期末数値)を予想することができます。
計算の簡略化
しかし、すべての項目を上記のように予想していくと、1項目につき4行の計算式が必要になります。
このため、簡略化できるものは簡略化したほうが良いでしょう。
貸借対照表項目の3つの予想方法
- 簡略化せずに期首+増加-減少=期末の計算をする
- 期末数値をほかの項目に連動させる
- 増減なしと仮定する
もちろん、簡略化せずに考えるのも1つの方法です。しかし、ほかの方法も有力です。
ほかの項目に連動させる
たとえば売掛金の場合は、ほぼ売上高に連動すると考えてよいでしょう。
- 期末売掛金 = 当期の売上高 × 一定割合
増加と減少に分けるよりは計算式がシンプルになります。
財務モデリングにおいて、計算式がシンプルであることは非常に重要です。見やすくなりますし、ミスも減るからです。
不必要に複雑な数式を作るのは悪いことであるという意識を持っておくとよいと思います。
増減なしと仮定する
損益計算書の項目でも使った考え方ですが、金額が小さい場合や予想が難しい場合は横置きするのもよいでしょう。
増減なしと仮定する項目は、考えた末に増減しないと予想をしたのではなく、どうせ正確に予想ができない(する意味もない)ので、増減なしということにするわけです。
理論上では細かく予想すべきではあるものの、実務上では、このような合理的な手抜きも頻繁に行われます。
予想貸借対照表を作成するための学習
以上が、予想貸借対照表を作成するにあたって抑えておくべき基本的な考え方です。
次回以降で、具体的な項目ごとにどのような予想方法を行うのが良いかや、増減や期末の値をどの項目に連動させるのが良いかなどを学習していきます。