第十二講 割引キャッシュフロー法(DCF法)
割引キャッシュフロー法における価値
インカム・アプローチは、将来得られるお金こそが価値であるという考え方でした。
割引キャッシュフロー法は、将来のアンレバード・フリーキャッシュフローこそが企業の価値であるという考え方をします。
割引キャッシュフロー法は、英語表記でDiscounted Cash Flow Methodであるため、頭文字をとってDCF法と呼ぶことが多いです。
アンレバード・フリーキャッシュフローについても、英語の頭文字をとってUFCFと記載することが多いです。
現在価値
DCF法では、将来のUFCFが事業価値になるという考え方です。
しかし、「将来」をもう少し限定しないと、企業の価値はほぼ必ず無限大になってしまいます。
そこで現在価値という考え方を使います。
10年後の100万円の価値
企業金融の世界では、お金が余っているときは投資をして増やすものだと考えます。
したがって、いま100万円を受け取った場合は、投資をして毎年 [5%] 増やすことできます。
- 現在の100万円 = 100万円 × (1 + 5%)^10 = 10年後の163万円
このため、現在の100万円と10年後の163万円が同じ価値だといえます。
逆算すると、10年後の100万円は、1年につき [5%] ずつ価値が減っていきます。
- 10年後の100万円 = 100万円 ÷ (1 + 5%)^10 = 現在の61万円
このように、期待される将来のリターンを使って、将来の価値を現在の価値に調整することを割引くといいます。
割引くことで求められる現在の価値のことを現在価値といいます。
割引率
割引きの計算に使う期待される将来のリターンのことを、割引率といいます。
当然ですが、割引率は何に投資をするかによって異なります。
DCF法での価値算定
DCF法の割引率
DCF法では、加重平均資本コストを割引率に使用します。
加重平均資本コストは、英語表記 Weighted Average Cost of Capital の頭文字をとってWACC(ワック)と記載されるのがふつうです。
DCF法での事業価値の計算
DCF法は、将来のアンレバード・フリーキャッシュフローが企業の価値であるという考え方をするのでした。
これを実際に使う指標に置き換えると、次のようになります。
- 事業価値 = 将来のUFCFをWACCで割り引いて求めた現在価値
求めるのは事業価値、将来のお金はUFCF、割引率にはWACCを使います。
企業価値算定を財務モデルに反映する
さて、以上の内容を財務モデルに反映しましょう。
各指標の求め方は、以降の講義で扱います。