第三講 予想損益計算書|売上高の予想方法

売上高の正確な予想は可能か

将来のことである以上、真の意味で正確に予想する方法はありません。常に正しい予想をするために神になるしかないでしょう。

しかし、ちょっとだけロジカルな予想方法ならあります。

過去の数値を分析する

  • A社の来年の売上高はいくらになるか?

これだけの情報で予想をすることはほとんど不可能です。しかし、情報を少し追加するとどうでしょうか。

  • A社は直近3年間で、毎年3%ずつ売上高を伸ばしてきた。今年度の売上は1,000億円である。A社の来年の売上はいくらか?

これなら、来年度の売上は1,030億円くらいになるのではないか?という仮説が立てられます。これが売上予想の基本です。

もう少し情報を増やします。

市場の状況を分析する

先ほどは過去の情報のみで予想を行いました。市場の情報が加わるとどうでしょうか。

  • A社は直近3年間で、毎年3%ずつ売上高を伸ばしてきた。今年度の売上は1,000億円である。
  • 競合のB社も最近は年率3-4%ほど売上を伸ばしてきたが、来年の売上は5%になる見込みだそうだ。以前よりも大きく売上が伸びる背景は、市場が成長しているからとのことである。

今度はどうでしょうか。市場成長を背景に、競合企業が例年よりも大きく成長するという前提が加わりました。

このような場合は、A社の売上は例年と同じく3%ほど増加しそうだが、もしかしたら3%よりも少し大きく成長をして、1,040億円~1,050億円くらいになるのではないか?という仮説が立てられます。

売上を分解する

単価 × 数量に分解する

さて、もう少し情報が加わるとどうでしょう。先ほどまでの情報に加えて、次のような情報が加わりました。

  • A社の商品の出荷数は毎年3%ずつ伸びています。この3年で値上げは行っておりませんが、来年は5%の値上げを行う予定です。

今度は、売上高を 出荷数 × 単価 で考えることができます。もちろん、値上げを行えば出荷数は多少下がるかもしれませんが、売上全体の成長率を1つのパラメータで予想をするよりは正確になりそうに思います。

事業ごとに分解する

売上高1,000億円の企業というと大きな企業ですから、いくつかの事業を持っているのが普通です。会社全体で何%成長するかを考えるよりも、事業ごとに考えたほうが良い場面もあるでしょう。

  • A社は法人向け事業と個人向け事業の2つを持っている。法人向け事業の売上高は700億円であり、規模は大きいがほとんど成長していない。
  • 個人向け事業の売上高は300億円だが、ここ数年は毎年10%近く成長している。

法人向け事業が700億円のまま、個人向け事業が300億円→330億円となり、全社で1,000億円→1,030億円という予想ができるようになるのではないでしょうか。

財務モデルに反映する

さて、以上を財務モデルに反映しましょう。

財務モデルに反映するときのイメージ

反映するときに考えること

将来のことである以上、真に正確な予想はできません。どのように考えれば、合理的な範囲で正しそうな予想を行えるかを考えましょう。

また、財務モデルは、ときに数千行にも及ぶものです。簡単なものでも300-500行くらいにはなるでしょう。

売上の予想に時間をかけすぎていると、いつまで経っても完成しません。何事にも共通したことですが、作成過程でこだわりすぎるよりもまずは終わらせることも大切です。

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