財務モデリングの練習方法と教材の選び方|講座の位置づけについて
財務モデリングは、数万個の数式をエクセルに配置する作業
財務モデリングは、究極的には、数万個の数式をエクセルに書きこむ作業です。このため、究極的には書き込めるかどうかが全てです。
もちろん、似たような数式が並んでいるので、3万個の数式を書くからと言って、3万種類の公式を覚えないといけないわけではありません。100種類くらいの数式を覚えて、それを適切に配置していくイメージです。
教科書では、理屈がわかっても数式を配置できない
大学の教科書をはじめとする従来型の教材は、「どんな数式が理想的か?」のような、抽象的なあるべき論が多く、具体的にどの数式を使えばよいのかの解説はほとんどありません。
結果として、理屈を語れるようにはなるものの、「じゃあ数式を配置してみて」といわれると、手を動かすことができないというパターンが多いです。
野球好きなおじさんに注意
スポーツにたとえて言うなら、「観客席で野球を語るおじさん」のような立ち位置になりやすいです。ホームランを打つ方法を語ることはできても、実際には、投げることも打つこともできません。
初心者に本来必要なのは、キャッチボールであり素振りでしょう。いきなり時速150kmの球を投げられる必要はありませんし、ホームランを打てる必要もありません。
財務モデリングにおいても、実際に手を動かすことが重要です。教科書を読んでいるだけでは、一生モデルを組めるようにはならないと思います。
昭和の部活スタイルに注意
確かに、最初にやるべきことは素振りかもしれませんが、素振りだけでヒットを打てるようにはなりません。実際にバッターボックスに立つ経験も必要です。1年生は素振りのみ、のような昭和の部活動のようなスタイルでは効率が悪いです。
財務モデリングにおいても、ある程度は実際のモデルに近い練習をする必要があります。学習用にデフォルメされた数式ばかりを扱っていては、ちゃんとしたモデルを組めるようにはなりません。
最初に必要な練習は、数式の暗記と配置の練習
初心者はまず、100種類くらいの数式を覚えるべきです。そして、それを実際にエクセル上に配置する練習をすべきです。
もちろん、理想を言えば、企業や業界の背景をよく調べて、理論を踏まえて、自分でゼロから数式を考えたほうが良いです。ただ、それは初心者にはできません。
新しいバットを買って素振りをしている少年に向かって、「そんなんじゃメジャーでホームランは打てない」と言っているのと同じです。
財務モデリングの練習に必要な教材
最終的には、100種類くらいの数式を覚えて、そこから適切なものを選んで、適切な場所に配置できれば十分です。これができるようになる教材を選ばなくてはなりません。
財務モデリングで使う数式の暗記
数式の暗記については、お金をかけずに独学をしても十分にできると思います。最近はインターネット上にも有用なサイトが増えていますし、100種類のうち50種類くらいなら、このサイト上でも解説していると思います。
まずは数十個を覚えて、「こういう数式を使えばいいのか」というのを体感されるのが良いと思います。感覚をつかめてくれば、あとは自分で数式を考えても、実際に使われている数式に近いものになると思います。
覚えた数式の適切な配置
数式を覚えたら、それを実際に配置してみる必要があります。配置するだけではあるものの、見やすく扱いやすいモデルにするためには、それなりの工夫と慣れが必要です。
また、インターネット上で公開されているモデルのサンプルは(有償・無償を問わず)あまり品質が高くないことが多いので、独学の場合は教材選びが課題になりやすいです。
財務モデリング本格入門としては、YouTubeでときどき配信を行っているので、その際にどのようなモデルを作っているかをご確認ください。
財務モデリング本格入門のコンセプト|無料版
本講座では、有料で公開しているUdemyの講座と、無料で公開しているウェブサイト・YouTubeがあります。
学習者の課題
私が初学者だったころは、インターネット上にはまともな情報が少なく、間違いだらけのサイトがほとんどでした。特に問題だったのは、断片的なサイトが多かったことです。運転資本の計算だとか、フリーキャッシュフローの計算について書かれているサイトはあっても、モデルについて最初から最後まで情報が揃っているサイトはありませんでした。[1] … Continue reading
そのため、モデルを作れるようになるためには、何十個ものサイトを確認する必要があり、しかもサイト同士がかなり頻繁に矛盾しているという状態でした。最も信頼できそうな、学者が書いている本や記事を読むと、今度は具体的な数式が書かれていません。基本的な数式の作り方が、いつまで経ってもわかりませんでした。
無料版のコンセプト
無料版の講座では、上記のような課題を踏まえて、必要な情報を揃えることを意識しています。
- モデリングに必要な知識をある程度網羅的に紹介する
- モデリングのイメージを提供する
初歩的なモデルを作るために必要な数式は、ひととおりこのサイト内で紹介していると思います。また、YouTubeの実演動画を見ていただければ、どんなモデルをどういうスピード感で作るのかの感覚をつかめると思います。
デメリット
裏を返せば、練習自体は自分でやってくださいというスタンスです。読むだけでモデルが組めるようになるわけではありません。
自学自習が得意な方や、モチベーションが高くモデリングの勉強に時間をかけられる方なら、このサイトの情報で十分にモデルを組めるようになると思っています。
財務モデリング本格入門のコンセプト|有料版
Udemyにて有料で講座を公開しています。
学習者の課題
財務モデリングの練習には、それ自体にそこそこの時間がかかります。練習を始める前には、何時間もかけて決算書をエクセル化しないといけませんし、完成したモデルのチェックにも時間がかかります。どこかが間違っているけど、どこが間違っているの分からない、という状態のまま10時間くらい悪戦苦闘することもあります。
私自身も、初学者だったころは毎日何時間も練習をしていました。4回目のモデルがバランスしなくて苦戦している最中に、いままで作ったモデルが1つも正しくなかったことに気づいたりもしました。同じ企業のモデルを違うフォーマットで何度も作り直してみて、どれが一番見やすいかを考える、といった試行錯誤もしました。
こういった学習のスタイルは、それなりにモチベーションが高く、時間に余裕がある人でないとできません[2]当時の私は大学生だったので、時間的には余裕がありました。。多くの人は、モチベーションや時間の問題で、途中で挫折してしまいます。
有料版のコンセプト
有料版の講座では、上記の課題を踏まえて、効率的に学習できるようにすることを意識しています。
- 挫折を防ぎ、スキルの獲得にコミットする
- モチベーションや学習時間に制約がある中で、効率的に学習する
財務モデリングは、2-3日の勉強でできるようになるものではありません。しかし、通常なら半年かかるものを、3か月に短縮することならできます。
Udemyの講座では、必ずしもモチベーションが高くなく、勉強に使える時間が限られている方であっても、「いちおう、モデルなら組めるよ」と言えるようになっていただくのが目標です。
Part I の目標と位置づけ
財務モデリングは、究極的には、100パターンの数式を覚えて、それを適切に配置していく作業だと書きました。Part I では、講義で数式のパターンを紹介し、練習問題で数式を使う機会を提供しています。
練習問題のレベルとしては、「この数式をここに配置してください」という指示のもとに、数式を配置するだけです。講義全体をとおして、1つのちゃんとしたモデルを作り上げるようなイメージです。
Part I の内容は総じて、一度できるようになってしまえば、なぜこんなことができなかったのだろうか?と感じるようなレベルかもしれません。しかし、自力でできるようにするのは決して容易ではないと思います。
到達点としては、基本的なモデルの作り方を把握できたという状態を目指しています。
Part II の目標と位置づけ
Part II は、練習問題が中心の講座です。練習にはどうしても時間がかかります。Part II では、効率的に練習をするために、難易度を調整した練習用のモデルを提供し、その解説を行っています。
練習問題の内容は、「この式を適切な場所に配置してください」とか、「適切な式をここに配置してください」といったものです。Part I と比べると、指示の具体性が少しずつ下がっていきます。
最終的には、自分で適切な数式を選んで、自分で適切な場所に配置できるようにする、というのを目指します。
到達点としては、最低限の練習を積むことで、いきなりモデルを作れと言われても、いちおう対応できるという状態を目指しています。